AORについて

最近、F山という僕の友達は事あるごとに"AOR"という単語を連呼している。彼がその言葉を好むようになったのは単に語感が良かっただけだろうが、彼の使う"AOR"は実に奥が深い。本来、70年代アルバム志向のアーティストを意味するはずのその言葉は、歪曲・解体・再構築を経て新たな意味を(彼とその周りの少数だけで)持つようになった。彼の意図を完全に理解したわけではないが、彼の言う"AOR"とは「80年代後半〜90年代前半にかけて様々な形で表現されたバブルの匂いが残る物の総称」らしい。音楽で言えば90年代前半に隆盛を誇ったB'z、WANDST-BOLANDEENZARD宇徳敬子らなどに代表されるビーイング系が良い例だろう。映画で言うならば、松任谷由実の音楽に合わせて僕らの胸をバブルの香りで包み込んだ「私をスキーに連れてって」や「彼女が水着にきがえたら」などが代表的だろう。このようなAORは枚挙に遑がないのだが、90年代前半、小中学生として過ごした人ならばその雰囲気は分かって頂けると思う。

そんな新しいAOR世代である所の僕らがAOR大会を開いていた時、この言葉の研究者F山氏がこれぞAORだと1本のカセットテープを取り出した。早速聴いてみると、どこかで聴いたことのある歌声の女性が、AORサウンドに乗せて最高のAORボーカルを歌っていたのだ。俄にざわめくAOR会の一同は議長(F山)に一斉に「これはどこのAORだ?」と尋ねた。するとF山氏は高らかに「これはZOOのかの名曲"Choo Choo TRAIN"のカップリング曲"after care"」だと宣言した。これが世に言うAOR革命である。明日、シングルを買おうと思う。